<河上雅哉 小説一(1997年)>






日々と嘘 あるいは ドン・ジョヴァンニ












もし仮に言語の発明、語の形成、観念の分析がなかったとして、それでも魂の交流がありえたならば、「音楽」こそがただ一つのその方法になったのではないかと私は考えた。それはいわば実現されなかった一つの可能性である。人間は別 の道に入り込んでしまったのだ−話し言葉、書き言葉の世界に。
       
   マルセル・プルースト−失われた時を求めてV『囚われの女』









「ここは、まるでオペラのセットのようですね。『ただそこにあるだけ』という自由なものが、ここには何一つない。存在するもの一つ一つが、あなたの緻密な演出によって、なんらかの意味をもたされているかのようです。このソファも、そのイスも、私たちの目の前にあるこのテーブルも、観客がいなくなれば段ボール箱へと片付けられる小道具のようです。無造作に投げられた服も、平積みにされた本も、こう言ってはなんですが、あなた自身の体すらも…」


 その部屋について、誰かがこう言ったことがある。


−構造としては、いわゆる一般的なワンルーム・マンションと特に違ったところはない。八畳のフローリング、ちょっとしたキッチン、それにユニット・バス。違うところといえば、浴槽がやや大きめだということくらいだろう。風呂好きの彼がこの部屋を選んだのはそこに理由がある。
 あとは別にどうでもよかった。八畳の空間、彼に占有される空間、彼に生きられるべき空間があれば、どこに住もうと彼の部屋はこうなっていただろう。


 ポップなランプやアール・ヌーヴォ風の姿見、箱型蓄音機など、それ自体が演劇的な雰囲気をもつものがその部屋にはいくつかあるが、それだけが理由なのでもない。机や、ベッド、テーブル、本棚といった大きな家具の全体的な配置から、カーテンのたゆみ、ベッドの乱れ、本の配置という細部に至るまで、全体的にも、どの部分に注目しても、そのほとんどが「絵」として完成されているということがきっとその大きな理由なのだろう。

−どこかに観客がいるような、そして、観客に見られることでしかその存在を証明することのできないような不確かさが、たしかにこの部屋にはある。

 


−彼はベッドにいる。




 眠り
 
 まどろみ

 そして、ぼんやりと彼は目覚めつつある。

 暗やみが徐々に明るくなり、薄暗い部屋が彼の目に浮かび上がってくる。
 

−突然、彼の目の前の薄闇がぱっと明るくなった。


 光が部屋に差し込んでくるのだろうか、彼は光の方向を見る。彼はそこに開いたドアのようなものを見る。


 そして一瞬、そこから出て行く女の姿のようなものを見る。


−逆光が、ドアから出て行く女の姿を影絵のようにしていた。


 それは昨日の夜を共に過ごした女だったのか?
 それとも、夢の最後のワン・シーンだったのか?


−部屋はすぐにもとの薄闇に戻る。


 目醒と夢の境界にいた彼にははっきりとそれを認識することはできなかったが、とにかく、部屋が再び暗くなったとき彼は完全に目覚めた。




 彼はドン・ジョバンニ。



 
 いや、彼はたとえるならドンジョバンニ、である。
 モーツァルトを愛し、彼のオペラ「ドン・ジョバンニ」を愛し、そして、ドン・ジョバンニのように複数人の女性を愛する。だから、彼はたとえるならドン・ジョバンニである。
 ドン・ジョバンニにたとえないならば、彼は一人暮らしをしている若い男、ある一人の学生であると言うことができるだろう。




−目覚めた彼はまずは軽く、そして思いきりベッドの上で伸びをする。




 彼が彼の肉体の隅々にまで浸透してゆく。それを確認してから彼はゆっくりと上体を起こし、あたりを見渡す。見られることによってそこに彼の部屋が誕生し、そして、部屋の全体に、全部分に彼が浸透してゆく。
 その毎朝の習慣を済ませ、彼はのっそりベッドから出る。寝起きがあまりよくないのか、だらだらと、彼はスリッパを引きずるかのような足取りで冷蔵庫にむかって行く。

−「ガチャリ」

 彼は牛乳をとりだし、つぎに、食器棚を美しく飾っているブルーのベネチア・グラスの一つを手にとり、それに牛乳を注ぎながら、また、だらだらとベッドに戻ってゆく。

 そして、ベッドに腰掛けて牛乳を飲みながら彼はひとりごちた。

「もう十一時か。たしか今日は千手が、十一時頃に来ることになってたな」



−彼はドン・ジョバンニなので、ここには何人かの女が出入りしている。
 だが、彼は自ら女を誘惑したりはしない。彼は己の快楽のために女達を招き入れているのではない。彼はある思惑をもって、彼を望む女たちを差別 することなく、拒むことなく受け入れ、そして、彼女達の望みをかなえることを第一に考えているのだ。
 彼女達は彼を自分だけの恋人と考えているかもしれない。しかし、彼の愛はそんなものではない。

−女たちが勝手気儘に投げ掛けてくるイマージュを無抵抗に引き受けること。
 
 それが彼の愛なのである。



 彼が二杯目の牛乳をコップに注ごうとしたとき、呼び鈴の音が部屋に響いた。
 立つのが億劫だということもあったが、ちょうど約束の時間だったので、彼はベッドの上から声をかけた。
「開いてるよ、どうぞ」
 この部屋のドアは女が来ているとき以外常に開かれている。

−「ガチャリ」

 スーパー・マーケットのビニル袋を持った女のシルエットが、強烈な日光とともに彼の目に飛び込んできた。その女は部屋に入ると、薄ら闇のなかで牛乳を飲んでいる彼に、からっとした声をかけた。 
「おはよう」
 彼は残りの牛乳を飲みほしてから女にこたえた。
「モーニン。今日は何をつくってくれるの?」
 女はその問いには特に答えず、薄暗い部屋を見渡してこう言った。
「そんなことより牛乳飲む前にカーテンくらい開ければ?」
 


 彼女は千手という。彼と同じ年齢、学生。
 彼女にとっては今、彼にとっては一つ前のアルバイト先で二人は知り合い、半年ほど前に付き合い始めた。
 二人はたまに外でデートをするけれど、千手がここに来て彼に食事をつくるというのが、基本的なデート・パターンだ。



 靴を脱ぎ、荷物をテーブルの上に置いたあと、彼女は部屋のカーテンを開けた。薄暗かった部屋が瞬時に光に充たされる。
 そして、彼女はいつものスーパー・マーケットの袋からがさごそ食材を取りだし始めた。
「今日はスペイン風オムレツとトマト・サラダよ。どうせ朝御飯もまだだろうから、すぐに作ってあげるわ」



−手際よく料理をつくりはじめる千手の後ろで、彼はパジャマを脱ぎだした。昨日着ていた服がベッドから手の届くところにポンと投げられている。彼はそれに手を伸ばす。
「今日は何時までいられるの?」
 白いシャツのボタンを止めながら彼は彼女に訊ねる。
「ちょっと用事があって、三時前に出ていかなきゃならないの。でも、できれば九時くらいにまた戻ってくるつもり。オーケー?」

 何の用か、彼は訊ねない。

「泊まりは?」
「そのつもりだけど」
「オーケー」
 彼はベッドの上で黒いジーンズをもものあたりまでもぞもぞ履き、ようやくベッドから立ち上がり、仕上げにグッと腰までジーンズを引き上げた。

 ホックを止め、ジッパーを上げ、彼の本日の装いは完成する。

 部屋の隅にある姿見を見て、彼は昨日と変わらない自分の姿を確認する。
 「OK」
 彼はつぶやいた。



−卵の焼ける香ばしい匂が、料理の完成が間近であることを思わせる。
 テーブルの上を片付け、食器を用意し、たいていの手伝をすませて手持無沙汰になった彼はソファに座り、見るとはなしに千手の後ろ姿を見ている。
 彼女は普段おしゃべりなほうなのに、料理しているときは無口なのがおかしい。
 


 幸せの風景。愛のまなざし。



「何かBGMかけようか」
 彼はレコードを物色しはじめる。ここのラックにはクラシック、ラップ、シャンソン、ポップス、ジャズと、さまざまな種類の音楽が収められている。

「クラシックがいいわ」

 彼女は料理をテーブルに運びながら言った。

「気が合うね。僕もそんな気分だったんだ」

 彼は蓄音機の蓋を開けた。伯父から貰ったこの蓄音機のやわらかな音を、彼は愛している。

 彼は回転板にレコードをセットし、そっと針をのせる。
 彼が選んだのはモーツァルト、オペラ「ドン・ジョバンニ」第一幕。

 
 部屋では食事の風景が始まる。
 そして、蓄音機の上では黒い円盤が一定のスピードで回転し始める。



…夜。満月の青白い光。

 荘厳な館の前である。バルコニーの下、従者風の格好の男が一人、物陰に隠れて館の様子を窺っている。彼はレポレルロ。館に忍び込んだ主の帰りを待っている。
 イライラしながら、館の娘の寝室に忍び込んだ主の首尾を心配しながら、しかし、毎夜のように色漁りをする主の性懲りなさに不平をならしながら、彼は待っている。
「あっしが見張番で、旦那は恋人と館の中。あぁ、召使なんかやめて、貴族になりてぇもんだ。−おや? 館のほうが騒がしいぞ」
 
 館から女の叫び声がする。ガラスの割れる音、何かの倒れる音、バルコニー窓の開く音。
 バルコニーに顔の下半分を布でかくした男が現れる。


 彼はドン・ジョバンニ。


 彼は館の娘、ドンナ・アンナの寝室に忍び込んだのだが、彼女に騒がれてしまいバルコニーから逃げようとしている。しかし、ドンナ・アンナは彼を逃がすまいと、彼の腕にしがみついて離さない。


−絶望して気のふれた女のように、私はあなたを離しはしないわ!


 叫ぶ彼女をドン・ジョバンニは力まかせにふりはらった。部屋の中へと突き飛ばされた彼女は叫び続けながら館の奥へと駆けてゆく。

 彼女があきらめたことで少し安堵した彼は、バルコニーからふわりと下へ飛び降りた。着地した彼は辺りをみまわし、抑えた声でレポレルロを呼ぶ。


−レポレルロ、どこにいるのだ?


 「へいへい、ここに」


−疾う退散するとしよう。


 「今夜はめずらしくお早いお引き上げで。たまにはこういうこともあるもんだ」

 レポレルロは主の不首尾を半ば気の毒がるように、半ば揶揄するように軽口をたたきながら退散の準備を始めた。



 彼らがまさにその場を去ろうとしたとき、大きな音とともに館の扉が両開きに開いた。
 扉を開けたのはこの館の主、騎士長だった。彼は自分の背後に隠れている愛娘に、助太刀を連れてくるよう命じ、館の中に去らせる。


−そこの賊、ここが騎士長の館と知ってか。ならば不敵も不敵、わしが自ら成敗してくれる。さあ、剣をとれ。


 騎士長は手に持っていた二本の剣のうち一本をドン・ジョバンニの方へと投げた。


−御老体、おのれの年を考えられよ。


 彼は剣を手にとらず、そのまま立ち去ろうとする。しかし、騎士長は娘を汚そうとした賊を逃すまいと、剣を構えてドン・ジョバンニのゆくてを阻んだ。


−決闘するのだ!


−哀れな老人だ。仕方がない、死にたいのなら。


 ドン・ジョバンニは剣を手にした。

 二人はしばらくの間斬り結んでいたが、少しも経たぬ間に騎士長は急所を刺されてしまう。


−ああ!


 仰向けに倒れた虫の息の騎士長に彼はとどめを刺してやる。その慈悲の一突きで、騎士長は絶命した。

 

 「…旦那! 恐ろしいことに」
  傍らで見ていたレポレルロは主に向かって叫んだ。 


−恐ろしくはあるが、その死体が自ら望んだこと…
 これ以上この手を血で染めぬよう、早くここを去ろう。


 騎士長の亡骸の脇に剣を投げ捨て、ドン・ジョバンニは闇の中へと駆け去ってゆく。レポレルロも主のあとを追ってせわしなく走ってゆく。闇へと消えてゆく二人の背後で、ドンナ・アンナとその婚約者ドン・オッターヴィオの声が聞こえる。


−お父上、助太刀に参りました。お父上、どこにいるのですか?
 

 残された騎士長の屍の周りに血溜りが広がってゆく。恐らく赤いはずのその円い血溜りは、月明りのせいで黒く光っていた…。




−ブラック・コーヒー。二人は食事を終え、食後のコーヒーを飲んでいる。食事中の会話で近ごろの新鮮な話題をだし尽くしてしまった彼は、ふと朝のことを思いだした。
「そういえば、今朝ここに来るとき誰かとすれちがわなかった?」
 彼は千手に訊ねた。
「誰か来てたの? 男、それとも女?」
 彼は一瞬考えて、そして、その一瞬の間を埋めるように少し早口でこたえた。
「男だったんだけどさ、ほんとに誰か来てたのか、それとも寝ぼけてたのか、はっきりしないんだ」
「私、今日はスーパー・マーケットに寄ってて駅と逆の方から来たからよくわからないわ。でもスーパーのほうには誰も歩いてこなかったし、駅の方へ向かってく後ろ姿は何人か見たけど、男はいなかったわよ」
 彼女はコーヒーを一口飲んだ。
「でも、誰かいたのか寝ぼけてたのかわからないなんて変な話ね」
 彼は答える。
「昨日の飲み会でけっこう飲んだからね。記憶がちょっとあいまいなんだよ。もしかしたら友達泊めたかもしれないし、一人で帰ってきたかもしれない」
 彼女は黙って聞いている。

「それに、今、この瞬間以外のことなんて、夢や物語とあんまり変わんないと思わない?」

 彼はニッコリと微笑み、そして彼女にキスをした。



−カーテンは再び閉じられた。カーテンの隙間から差込むほのかな光が部屋の中をぼんやりと照らしている。

 床には今朝と同じように服が脱ぎ捨てられている。再びの薄闇。

 朝の風景と違っているのは、テーブルの上に食器が散らかっていることと、床に投げられた服のなかに女物の服がまじっているということくらいだ。


−しんと静まりかえった部屋にひびく単調な音。
 空間のゆらぎ。
 
 ベッドの上の布団は、漣のように動いている。
 
 こえ。

 声。

 単調な音は部屋にひびき続ける。


−彼は千手を愛しながら、「ドン・ジョバンニ」について考えている。


 ドンナ・アンナは本当にドン・ジョバンニの愛撫を拒んだのだろうか? ジョバンニの愛を、最高の享楽を、彼女は本当に受け入れなかったのだろうか?


−もしかすると、実は彼女はジョバンニの愛に身を任せたのかもしれない。


 彼女はあまりの快楽に恐怖して叫び声をあげてしまったのかもしれない。世間体を恐れ、婚約者の存在を恐れて被害者を装ったのかもしれない。


 ある夜の快楽と死を、隠蔽するために彼女は復讐者を演じたのかもしれない。


 しかし、全ては彼女の寝室の闇で起こった出来事である。
 何人も、それを知ることはできない。

 ジョバンニすらも、決して彼女の叫びの本当の意味を知ることはできない。


 勿論、彼も…。




「…そろそろ行かなきゃ。ごめんね、食器片付けれなくって」
 千手はベッドから出て、床に散らばった服をかき集めだした。
 話題が特に見つからなかったので、彼はベッドの中から訊ねてみる。
「僕が片付けるからいいよ。ところで、用事ってなに?」

「友達が死んじゃったのよ。みんなで追悼会をするの」
 下着を着ながら彼女は言う。
 
「そう、それはお気の毒に」
 彼は気の毒そうな顔をして言う。

 彼のその表情を見て、彼女は突然、シュミーズ姿で笑いだす。

「ウソ。ウソよ、あははっ」

 彼の顔がそんなにおかしかったのか、彼女はしばらく笑い続ける。彼はどう反応していいのかよく判らなかったので、まずは顔から哀惜の表情を消したが、かといって無表情になるのもおかしかったので、あくびをするふりをして、彼は表情を誤魔化した。
 そして、仕上げに彼女にむかって怒ったふりをして言う。

「うそつき女。まぁいいや…俺の服とって」

 まだ笑いの余韻が抜けずにひくついている彼女の手から服をうけとり、彼はベッドの上でそれを着はじめた。

 そのとき、ベッド脇の電話の呼び出し音が鳴りだした。


 彼はさっと服を着て、受話器を取る。



「はい、もしもし」

−「あ、先輩、わたし、京子です。今学校終わったんですけど、今からちょと行ってもいいですか?」

 その声は京子。彼が以前在籍していたサークルの後輩。彼の恋人の一人。
 彼はちらりと千手の方を見る。彼女は姿見の前で身嗜を整えている。
 彼はわざと白々しい他人行儀の声色をつくって受話器にむかって話す。

 「あぁ、お久しぶりです。今どこにいらっしゃるんですか?」

−「アハハ、どうしたんですか、そのしゃべり方。新しい遊びですか?」

 「ええ、そうなんです」

−「今、学校の前にいるんですけど」

 「そうですか。ええ、かまいませんよ。つもるお話もあることですし」

−「三日前に会ったじゃないですか。変なの…」

 「そうでしたね。ははは、うっかりしていて。じゃあどこに何時にしましょうか」

−「お家に行こうと思ってるんですけど…外がいいですか?」

 「いえ。かまいませんよ。じゃあ何時に?」

−「三、四十分くらいでつきますけど」

 「わかりました。また後ほど。じゃあ、失礼します」

−「ほんとに変ですよ? 具合でも悪いんですか?」

 「具合ですか? とってもいいですよ」

−「…わかりました。じゃあ後で。待っててくださいね」

 「ええ、わかりました。それじゃ…」



「誰?」
「先輩。ちょっと会いに行ってくるよ」
「そう。晩御飯はその人と一緒に食べるの?」
 千手は靴を履きながら彼に訊ねる。
 
「わかんないけど、多分食べないね」
 京子は料理ができないので、彼はこう答えた。
「君は九時頃に帰ってくるんだよね。もし遅くなったり、早くなったりするようだったら電話してよ。多分、僕も九時ごろに帰ってくると思うけど」

「わかったわ」

 ドアを開ける直前に、彼は彼女にキスをする。
 
 千手はドアを開けた。部屋の薄闇に光りが差込んできたが、少し翳りはじめた日の光りは朝ほどはまぶしくなかった。
「じゃあね」
 彼女はするりとドアの隙間から外へ出ていった。ドアはゆっくりと閉まり、部屋は再び薄暗くなる。一度光の差込んだ部屋は、こころなしか、さっきよりも暗く見える。


 彼はスリッパを引きずりながら窓際へ行き、千手が朝やったようにカーテンを開けて部屋を見渡した。


 隠滅せねばならない証拠は、とりあえず二人分の食器。彼はそれらをキッチンへと運んでゆく。

「でも、用事って本当は何だったんだろう? まぁいいけどさ」

 彼は一人ごちながら食器を洗いはじめた。


(つづく)